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304話 無力化

last update تاريخ النشر: 2026-10-16 12:30:58

調べはすぐに上がって来た。

事故はミラトリウム製薬の薬剤を積んだトラックの前方不注意による横転事故で、一般車両が巻き込まれた形だった。その事故の際に、積んでいたタンクが破裂し、その薬剤を大量に浴びたのがあの運転手だという。

「周囲にばら撒かれたであろう薬剤については、現場の処理班が危険性無しと判断出来る濃度だったようだ。だがその薬剤を直接浴びた運転手については重篤な症状が出てもおかしくないな」

遼大がそう言う。

「そうね……」

そう言いながらも私は考える。

一体、何の薬剤を浴びたら、あんなふうに赤紫色の血になり、溶血するんだろうか。

「手術は上手くいったのかしら」

私がそう呟くと、湊が微笑む。

「確認して来よう」

そう言って湊がオフィスを出て行く。

私の脳裏にはEMSOの地下で見た、紫色の煙が浮かんでいた。

絶望の王・レプリトールディザスター

今もEMSOの地下階にはその薬品が充満している。分析を急がせてはいるけれど、今のところ、打つ手なしとなっている、まさしく悪魔の薬品だ。

その絶望の王・レプリトールディザスターの紫色の煙と、ついさっき手術室で見た赤紫色の血がリンクする。

千堂の血
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  • 跪くのはあなたです 流産の夜、私を選ばなかった夫は五年後、後悔する   304話 無力化

    調べはすぐに上がって来た。事故はミラトリウム製薬の薬剤を積んだトラックの前方不注意による横転事故で、一般車両が巻き込まれた形だった。その事故の際に、積んでいたタンクが破裂し、その薬剤を大量に浴びたのがあの運転手だという。「周囲にばら撒かれたであろう薬剤については、現場の処理班が危険性無しと判断出来る濃度だったようだ。だがその薬剤を直接浴びた運転手については重篤な症状が出てもおかしくないな」遼大がそう言う。「そうね……」そう言いながらも私は考える。一体、何の薬剤を浴びたら、あんなふうに赤紫色の血になり、溶血するんだろうか。「手術は上手くいったのかしら」私がそう呟くと、湊が微笑む。「確認して来よう」そう言って湊がオフィスを出て行く。私の脳裏にはEMSOの地下で見た、紫色の煙が浮かんでいた。絶望の王・レプリトールディザスター今もEMSOの地下階にはその薬品が充満している。分析を急がせてはいるけれど、今のところ、打つ手なしとなっている、まさしく悪魔の薬品だ。その絶望の王・レプリトールディザスターの紫色の煙と、ついさっき手術室で見た赤紫色の血がリンクする。千堂の血がそうさせているのだろうか。「事故に遭った運転手の運搬経路が分かったぞ」遼大にそう言われて私は遼大を見る。「そのトラックはどこから来ているの?」そう聞くと遼大が言う。「郊外だ、俺たちが以前、突入したベイサイドパイロットプラントのすぐ近くだな」そう言われて、やはりと言うべきか、あのベイサイドパイロットプラントが千堂家の根城のような気がした。「どうやらあの辺一帯は千堂家の所有地らしいな」遼大がそう言う。不意にスマホが鳴る。遼大がスマホを見て、画面をスクロールしている。「漏れ出した薬剤は、新しく開発した試薬のようだな」そう言って遼大が私に画面を見せてくれる。「見た事無い構造式ね」私がそう言うと遼大も頷く。「あぁ、俺も見た事が無い」私はその構造式を見ながら、ふと気づく。「でも、待って。ここに……」そう言って私が指した箇所を見た遼大が呟く。「レプリトールの変異型か……ヴェノムとはまた違った形だな……」そう言いながら考え込む遼大は研究者の顔をしている。湊がオフィスに戻って来た。「どうだった?」そう聞くと湊が言う。「あぁ、運転手は助かったよ。大量の輸血が

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  • 跪くのはあなたです 流産の夜、私を選ばなかった夫は五年後、後悔する   302話 執着

    誰も居ないと思っていたけれど、急に私の視界に何かが入って来る。視界に入って来たのは一人の男。その男は私を見て微笑み、ごくごく小さな声で言う。「安心してください。僕があなたを守りますから」そう言ってその男は私の頬に触れる。何故だかは分からないけれど、その男に触れられた時、ゾッとした。その瞳の奥にある欲望が、見えた気がしたからだ。私も知っているその欲望――相手を自分だけのものにしたい、そして願わくば相手が自分だけを見るように仕向けたい……そんな誰にでもある欲望。その欲望の眼差しが私に向けられている。今までだってそんな欲望はいくつも向けられて来たけれど。この眼差しの奥にある光の強さは尋常では無いと、直感的にそう思う。「うぅーー……」呻き声しか出せない。彼は何故か小さな声で私の耳元で囁く。「愛沢くるみさん……僕の天使……僕だけの可愛いお人形……」(何を言っているの……この男……!)ゾワッとした悪寒が体中を走り抜けていく。この男に捕まったらいけないそう直感が告げているのに、私は今、体を動かせない。その男の手が私の頬を撫で、そして首筋へ降りて行く。(止めて……止めて……止めて!)見た事も触れた事も無い、それが何なのかも分からないものへの恐怖なのか、私の瞳には涙が溢れて落ちて行く。「泣かないで……大丈夫です、僕が助けます」その男はそう言って私に極限まで顔を近付けて微笑む。◇◇◇「ミラトリウム製薬はやっぱり千堂が経営権を握っているのか……」調べた結果を見ながら遼大がそう言う。「そのようね」遼大と共にPCの画面を見る。国内の製薬会社の中でも、頭一つ分、抜き出ている。製薬会社としては既に国内では無くてはならないような地位にまで上り詰めている、といった印象だった。そして波多野優斗から聞いたように、汎用性の高い薬品から、かなり特殊な薬品まで、幅広くその種類を揃えていて、国内ではおそらくは誰も太刀打ちは出来ないだろうと思えた。「これだけの大きな会社だもの、自社で抱えているラボなんかもかなりの数ね」私がそう言うと遼大も頷く。「そうだろうな……そうなると絞り込みがかなり厳しくなりそうだな……」遼大に言われて私も考え込んでしまった。これで愛沢くるみの連れて行かれた場所の捜索範囲がまた広がってしまった。不意に廊下の向こうでパタパタと駆

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